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「時の余白に」 芥川喜好


本書は、読売新聞の解説面に月一回連載されたコラムをまとめたもの。コラムは現在も続いている。解説面の連載とはいえ、著者が美術担当記者だったので美術の話が多い。一遍のコラムの長さが4ページなので、ちょっとした移動の電車でも2~3編読めた。とはいっても、母が入院している病院で殆ど読んだのだけれども。

この本にでてくる芸術家は、流行を追わず、余計なモノを持たず、群れることなく自立し、決して急がず、偉ぶることも飾ることもなく、「閑」を楽しむ生活をおくるというひとが多い。芸術の世界は、考えられている以上に俗慾に塗れているようだ。中央の権力や流行から距離をおくひとは、「畸人」とか変わりものと言われる。奇人とは、誰もが求める自由と豊かさを、より強く追及したひとであり、人々の心に、凄さと驚きと、笑いと苦みを残していった人でもある。上手く立ち回る芸術家よりも「畸人」と呼ばれるひとのほうが魅力を感じる。

誰かが新しいことを始めるとたちまち同じことをする人間が続いてそこに「動向」なるものが生まれる。独り自分のなすことをしていたい者、別の方を向いていたい者は、疎まれる。時代性、時代の主潮とはそういうものかもしれませんが、考えてみればおかしな話です。
自ら振り返るなら、三十年の美術取材を通じて、群れから外れた単独の存在に、より深い関心を寄せてきた気がします。流れに乗じて今を時めく者に「嘘くささ」を嗅ぎとり、独り別の方を向いて自分のなすべきことをなす外れ者にむしろ「まともさ」を見るのは、まあ当方の性分でもありますが、実際にそういう具体例を数多く見てきたことも事実です。