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「日本写真史」 鳥原学


本書を購入したのは出版されて直ぐだったが、今まで読まずに書棚に置いていた。今回、東川町国際写真フェスティバルに参加するので書棚から引っ張り出して読んだみた。本書は幕末から東日本大震災後までの日本の写真通史。元々は戦後の写真史という話だったのを、著者が依頼して写真渡来に遡って話を起こすことにしたそうだ。新書での通史ということで、端折っている部分が多いのはやむ得ないことだと思う。どこの部分を捨てるかというのが著者の見識となる。下巻は本文が145頁で、後は年表、写真賞、関連文献に頁が割かれている。著者が写真弘社のギャラリーに勤めていたというのは知らなかった。

下巻のほうが知っている写真家が多く読んで面白い。新書で出すなら、戦後史に絞ったほうがよかったような気がする。カメラのデジタル化とインターネットなどの通信環境が進歩が写真表現に与えた影響は想像以上で、写真の文化文脈をどのようにデジタル写真に継承していくのかが今後の課題だと著者は述べている。銀塩プリントは、フィルムや印画紙を提供できるメーカーが激減し、一定のクオリティを維持するのが難しい状況となっている。杉本博司さんのように、印画紙を自分で発注生産しなければ希望通りのものが入手できなくなっている。

現在の日本の写真表現は非常に多様化しており、また混乱していると話を結ぶ写真関係者は少なくない。かつてのように、時代をリードする表現の主潮が見えないというのである。私も同意する部分はあるが、果たしてそう言い切れるだろうか。なぜなら多様に見える写真表現スタイルの根底に、四十年前にシャーカフスキーが指摘したような、自信の経験や生理的印象を、より率直に表現したいという願望が見てとれることが少なくないからだ。記号や言葉としての拒絶し、他者の心の深い部分に直感的に触れるための手段を写真に求めていくという心情。それが日本の写真文化を作ってきた原動力のひとつではないかとも思える。