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「水死」 大江健三郎


長江古義人は、自分の父親の水死に関する小説「水死小説」を「晩年の仕事」として完成させるため、四国の森の家で、資料が入っているはずの「赤革のトランク」を調べる。その結果、水死小説を書くだけの資料はないことがわかり、「水死小説」の執筆を断念する。その後は、ウナイコの「死んだ犬を投げる」芝居の劇団の話が中心となる。「死んだ犬を投げる」劇団は映画「メイスケ母出陣」の舞台化を進める。上演の前日、「メイスケ出陣」の舞台化に反対する者達との間に事件がおき、上演できなきなくなる。

本の帯には、「終戦の夏、父はなぜ洪水の川に船出したのか」とあり、本書を読む前は「水死小説」なんだろうと考えていた。しかしながら「水死小説」の執筆を断念となったあたりで、「水死小説」じゃないとわかり、また「アンチクライマックス」かと思ったが、最後はそれなりのクライマックスで小説は終わっている。父親の水死に関しては、話の進行中にその話題がでてきて、水死の様相はだいたい分かる仕掛けになっている。それにしても「水死」という題名ははぐらかせられた感じがする。どちらかというと「死んだ犬を投げる」のほうが題名とはふさわしいと思った。初めて著者の小説を読む人にとっては「四国の森」の伝承はわかりにくいだろう。ずっと読み続けてきてもわかりにくいのだが。著者の小説を読むなら初期から中期の作品が面白い(と小説の中で著者が書いている)。大江作品は「青年の文学」のように思う。