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「東京いいまち 一泊旅行」 池内紀


東京に住んでいるひとが、ホテルに一泊して都内観光をするということはあまりないと思う。訳ありでホテルに泊まることはあるかもしれないが。路地歩きやお祭りを見物するにしても一泊するのはゼイタクだ。そのゼイタクな東京一泊旅行記が本書である。

管理人が都内のホテルに泊まったのは大学受験と就職活動のときだけ。高校の修学旅行は東京を素通りした記憶がある。東京一泊旅行は時間と懐に余裕がないとなかなかできない。一泊してでもあの町に行きたいという旺盛な好奇心も必要かも。池内さんは、ホテルは新しいほどよく、食べ物屋は古い方が良いという。東京一泊旅行は旅の達人の池内さんに似つかわしい。

本書で取り上げている町でいったことがないのが小菅。小菅と言ってすぐ思い出すのは拘置所。面会や差し入れもないのに拘置所だけを見に行くというのもちょっと気が引ける。小菅は萱や葦のしげる原をいったもの。将軍家鷹狩りの休息所が作られ「小菅御殿」の名が付いたらしい。本書を読んで、小菅に行ってみたくなった。当然管理人は日帰りの散策。

東京一泊旅行はまた、「記憶の忘れもの」をひろっていく小旅行だ。日常だと気がつかないものが、「一泊」という余分の時間のおかげで、ふと見えてくる。それというのも人の目はカメラとちがい、見たものをそのままではなく、意識し選択し構成する。時間軸を取りかえると、意識がかわり、風景がまたガラリと違って見える。あらためて見つけたもの、気づいたこと、突拍子もない寄せ集めの大東京がかいま見せるおもしろさ。