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「ネオンと絵具箱」 大竹伸朗


アマゾンのリンクは文庫本になっているが、実際に読んだのは単行本のほう。単行本はアマゾンで絶版となっており画像がないため文庫本のほうのリンクを貼り付けた。札幌のジュンク堂には単行本が売っていたので購入した。文庫本は税込み1026円で、文字も小さいので単行本を選択。文庫本も高くなりましたなあ。本書は、音楽誌「クッキー・シーン」に連載されたエッセイ「トリトメのない音」と同じ時期に書かれたその他のエッセイをまとめたもの。

最近寝るとき聴いているのがPANTA「クリスタルナハト」。27年前に買った初盤をいまだに聴いている。「クリスタルナハト」がでた頃PANTAのライヴへ行って、隣に外国人ときていたひとがいてPANTAのことを「アジテーションロック」と説明していてなるほどねえと思った。寝る前、布団のなかで「クリスタルナハト」を聴きながら本書を読んだ。本書のなかで音楽の話題が多く、デヴィッド・シルヴィアンとかブライアン・イーノとか懐かしい名前がでていた。著者とデヴィッド・シルヴィアンとがつながりがあったとは。デヴィッド・シルヴィアンは英国のバンド「Japan 」のメンバーだった。当時バンド名をなぜ「Japan」と名付けのかと思ったが、管理人の好みではなかったのでアルバムを聴くことはなかった。70年代の音楽雑誌について著者は次のように述べている。管理人ならレッド・ツェッペリン”Achilles Last Stand”を聞いたかになるけど。

自分自身は、同人誌ではないのだが資金不足でなかなかカッコつかないが大きな「志」を内に秘め、人のやらないことを心の底で目指しているような、しかし今にも倒れそうな佇まいがそこはかとなくにじみ出ているようなそんな雑誌が昔から好きだ。「ロック」一つとっても、かたくなに「ジャンル」を掘り続けていく方向と「ジャンル」を超えて徹底的に「好み」に沿って突き進んでいく方向が長い時を経て徐々に奇妙な時間軸でつながってしまった、そんな印象がする。
ちなみに僕はツェッペリンよりグランド・ファンクに純な正当「ロック魂」をいまだに感じていて、そこになぜか今の破壊しつくされた日本の風景が時々チラつく。貴様は正座してグランファンのセカンドのケツ「孤独の叫び」を聞いたか!なんつって。

著者の仕事場がある宇和島で出会うおじさん・おばさんは強烈な個性を持っている。「マムシ狂想曲ハメ短調」に出てくるマムシが大好きな運送会社の社長やヤギ先生と呼ばれている人物。ヤギ先生には笑ってしまった。電車やバスのなかで読んでいなくてよかった。「年輪ディープ・パープル」には凄いおばあさんが登場する。「年輪ディープ・パープル」はおっさんになって日本で「メイド・イン・ジャパン」ライヴをやる第二期ディープ・パープル(除くリッチー・ブラックモア)の話かと思ったら、髪毛の色がディープ・パープルのおばあさんの話だった。このディープ・パープルばあさんの長生きの秘訣が、実にまっとうな話だったと著者は述べている。

宇和島の美容室で八十九のばあさんに心について話を聞くとは思わなかった。何が何でも長生きしたいと普段特別に強く思っているわけではないが、心の在り方と人間の寿命との関係には深い説得力を感じた。本当のことなんだろう。おそらく。そしてそんな関係に至る基本は、何かやりたいことがあるかどうかなんだと思った。何かどうしてもやらなければ気が済まないことのまわりに心の在り方が関わってくるわけであり、特にやりたいことも無ければ長生きも心も関係ないだろうし、まずそんな事自体に思いを巡らすこともないに違いない。そもそもばあさんとファッションとの出会いが重要だったのだ。しかし人としてほぼ九十年の時間の中、寝起きを繰り返し生き抜いてきたことで一体どのような境地に至るのか、全く想像がつかない。自分でさえまだばあさんの半分チョイ過ぎあたりである。面白いような長すぎるようなそんなことしか思い浮かばない。