KAZUHIKO KIKUCHI BLOG

「アメリカの心の歌 expanded edition」 長田弘


本書は、1996年に岩波新書の1冊として刊行されたときの文章に新たな文章を加え、定本としたもの。同じ著者には「定本 私の20世紀書店」があって、似たような再版ということか。新書は絶版になるのがはやいので入手しがたい新書が単行本として復刊されるのは嬉しい。本書に紹介されている曲が広い意味でのカントリーなので知っている歌い手よりも知らない歌い手が多く、liveを聞いたことがあるのはボブ・ディランだけ。

今回読み直してみてやはり、「ミー・アンドボビー・マギー」の章が印象に残った。唯一歌詞が記憶に残っていた。”Freedom’s just another word for nothing left to lose”。自由とは、べつの言葉で言えば、失うものが何もないということだ。管理人は岩波新書版を読んだが、当時は今のようにネットの環境が整っていなかったので「ミー・アンドボビー・マギー」を聞こうと思っても簡単に聞くことが難しかった。カントリーのファンでもないのでわざわざCDを買うこともしなかった。今回は、Youtubeでジャニス・ジョップリンとクリス・クリトファソンの「ミー・アンドボビー・マギー」を聞いた。初めに読んだ時に想像した曲とはちょっとイメージが違っていた。ジャニスがもっとシャウトする歌だと勝手に思い込んでいた。まるっきりカントリー&ウェスタンの曲だった。本を読むだけで曲を想像するというのは困難な作業だと思った。

歌は本来、草の根の音楽である。そして、ハードタイムズ(苦境)とは、アメリカの人びとの歌の故郷の名なのだ。アメリカの歌はハードタイムズの歌を繰りかえし歌いつづけた歌だった。アーティストという個人ではなく、歌うたいは、すぐれた歌うたいであればあるほど、人びとがそこで生きる時代の集合的な意識のペルソナなのだ。