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「ニッポン旅みやげ」 池内紀

ニッポン旅みやげ

本書は文源庫のWEBに50回にわたり連載したものから40篇を選んでまとめたもの。「ニッポンの山里」、「ニッポン周遊記」と合わせてニッポン・シリーズ三部作となる。「ニッポン旅みやげ」という題名から、土産や特産品の話かと思った。ところが、本文を読んだら「ニッポンの山里」や「ニッポン周遊記」と同じ旅の話だった。

鳥打ち帽をかぶり、着古したジャケットとジーンズ、足はラバーソール、背中にはハートマン製リュックという出で立ちで全国を旅する。この出で立ちは春夏秋冬はほぼ同じだそうだ。著者の旅は歩くことが基本で、電車とバスを乗り継ぐ。決して急がない旅は、細かな計画を立てないのであっちへこっちへと寄り道をする。

わが北海道からは、札幌市の控訴院と名寄教会が紹介されている。札幌控訴院は現在札幌市資料館となっている。正面玄関の上部には目隠しをしたギリシャ神話の法の女神テミス像、左右には天秤と剣のレリーフがある。管理人も何度か行ったことがあるが、どんな展示だったかは記憶に残っていない。資料館には故おおば比呂司さんの記念室があり、こちらのほうが面白かった。管理人は名寄教会にはまだ行ったことがない。それにしても著者はどうやって旅の行き先を決めているのだろうか。まさかサイコロで決めていないと思うが・・・

路上共和国をぶらついていると、人間の暮らしや文化がどんな道すじでひろがっていったのか、それがまたどのようにして断ち切られたかがよくわかる。常識とされていることが、多くの場合、何の根拠もなかったこともわかってくる。天下御免の大道はクセモノぞろいであって、思いがけないところに思いがけないものがひそんでいる。ときにはふてぶてしく、たいていはのんべんだらりとそこにいて、訪れる者がなければ、この世にないのも同然なのだ。
飛行機や新幹線や高速道路で駆けまわっている人には、日本は箱庭のように小さいだろうが、見えていなかった風景が見えてくると、このニッポン国が何倍にも大きくなる。列島そのものが二倍、三倍に拡大する。徘徊顧問官は何ものにも-場所にもモノにも-執着しないだろう。なにしろ彼はまるで手品のようにして、移動そのものをユートピアに変えていくのだ。旅レポートがたまの手みやげ。おおかた三、四ページなのは、それで十分語れるからだ。わが共和国は自在にのびちぢみして、目を閉じると、なおのことはっきり見えてくる。