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「ちいさな星通信」 奈良美智


本書はロッキング・オン社から出ている雑誌「H」に連載されていた「ちいさな星通信」を単行本にしたもの。単行本化に際して、全て一から書き直して自伝的に「ちいさな星通信」を書き上げたそうだ。本書には絵・写真・ローイング等がいたるところに図版としてあり、個展カタログ風になっている。

子どもの頃の話は短く、大学生以降がメインで書かれている。プライベートのことはあまり書かれておらず、あくまで芸術家としての自伝。ドイツ留学以降は、あれよあれよという間に有名なギャラリーや美術館で個展を行い、著者は世界中を飛び回っている感じ。飛躍の秘訣はどこにあるのだろうと思って本書を読んでも正直分からなかった。結局、作品を制作し続けることが大切という至極当たり前なことを肝に据えて実践するしかない。

本書の途中にある「カブール日記」は上と下が別々にめくれる。上が写真と絵で、下が主に文章と言う構成。本の中に小冊子が挟まっている感じだ。「カブール日記」で、著者は「ハーメルンの笛吹き男」と呼ばれている。学校を訪れ、次の場所に移動しようとすると子供達が手を握って離さなかった。そのことは悪い気はしなかったと著者は述べている。

時間の経過とともに、僕はきっとまた大事ななにかを忘れかけてしまうことだろう。けれども、忘れてしまわない自信がある。なぜならば、忘れてしまいそうになる時に、それを気づかせてくれるだろう友がいる気がするからだ。それは、今までに現実として出会った人々でもあるし、なだ出会っていないけれど、文字や音や眼を通して自分が勝手に友だと思っている人々でもある。そんなふうに思っていけたら、まだまだ自分は自分でいられるような気がするし、こうして会ったこともない君に(会っている人もいるだろうけど)、少しでも自分が語ったことが嘘ではないように、今日も爆音でロック聴きながら制作に向かうだろう。それは、かつて予備校の生徒たちに自分が語ったことを自分自身が実践しようと思い、ドイツに旅立ったことに似ている。これから何年生きれるのかわからないけれども、どんなに悩み落ち込んだとしても、なんとか乗り越えていけそうな気がしている。なんたって、僕は一人じゃないんだから・・・・だからこそ、制作に向う時は安心して一人になるのだ。