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愛してやまない20冊の文庫本<小説篇>

愛してやまない20冊の文庫本<小説篇>

学校が夏休み中ということもあってか新潮社が企画した「ピース又吉が愛してやまない20冊!」を真似して、管理人も文庫から20冊の小説を選んでみた。新刊で入手ができないものは選んでいないつもり。絶版になっている本のほうが愛してやまないものが多いけれども。今年の新潮文庫100冊に大江健三郎さんの作品が入っていなかったり、つかこうへい作品やオヨヨ大統領シリーズが絶版になったりと、昭和は遠くになりにけりということか。

レイテ戦記(中公文庫) 大岡昇平

小説と言えるかどうかわからないが、この時期に読むならこの本。この本を読んでいる時、戦場に行った変な夢をみた。喉が渇き、空腹で歩きながら、敵が見えず、乾いた銃声が聞こえ、もうこれ以上歩けないというところで目が覚めた。何とも奇妙な感じだった。

死霊(講談社文芸文庫) 埴谷雄高

高校生のときに1~5章を読んで「こんな小説が日本にあったのか」と衝撃をうけた。その後、文芸誌「群像」に死霊が掲載される度に雑誌を買って読んだ。結局未完に終わったのは残念だった。

人間失格(新潮文庫) 太宰治

高校生のとき「恥の多い生涯を送って来ました」の一文を読んで虜になった。今では何か気恥ずかしくて読み返せない。高校生のときなぜ何度も読み返したのかよくわからない。

夜明け前(新潮文庫) 島崎藤村

篠田一士さんの「二十世紀の十大小説」を読んで、「夜明け前」はそんなに面白い小説なのかと思い読んでみたところ、ほんとうに面白かった。島崎藤村の小説は「夜明け前」しか読んでいないが他の小説も読めねばと思いつついまだに読んでいない。

こころ(新潮文庫) 夏目漱石

「こころ」は高校生のころ何回も読んだ。不思議な構成の小説で、なぜ先生が自殺するのかわからなかった。小説としては「明暗」のほうが優れているのかも知れない。昔の文庫の解説は柄谷行人さんが書かれていて感心した記憶がる。

 芽むしり仔撃ち(新潮文庫) 大江健三郎

管理人は初期の大江さんの小説が好きで、その中でも「芽むしり仔撃ち」がいちばん好きだった。「万延元年のフットボール」や「同時代ゲーム」ほど難解ではなく透明感のある文体でよかった。

笑う月(新潮文庫) 安部公房

夢の記録というか話をまとめたもの。「笑う月」は花王のマークのような月が追いかけてくるという夢。「壁」も夢から着想を得ている。夢の採取のしかたが独特でちょっと真似できない。

ドグラ・マグラ(角川文庫) 夢野久作

巻頭歌「胎児よ 胎児よ 何故躍る 母親の心がわかって おそろしいのか」が不気味で小説の内容も摩訶不思議。管理人が読んだのは現代教養文庫の夢野久作傑作選。現代教養文庫版が絶版で、角川文庫から入手できる。

 カフカ短編集(岩波文庫)

カフカを初めて読むならこの短編集だと思う。管理人が最初に読んだのが「城」で、測量技師Kがいつまでたっても城のなかに入ることができず話が突然終わるのに戸惑った。カフカの作品は読んで分かる感じがしないけどなぜか読んでしまう。

ポオ小説全集(創元推理文庫)

「アッシャー家の崩壊」「赤死病の仮面」「メエルシュトレエムに呑まれて」等若い頃何回も読んだ。「詩と詩論」は読んであまり面白くなかった。装丁がポーのイメージにとても合っているような感じがした。

魔の山 (岩波文庫)  トーマス・マン

登場人物がサナトリウムでよくおしゃべりして、日本の小説ではこんなに会話が長くないなあと思った。「非政治的人間の考察」のあとに読んだような気がするがはっきりしない。

異邦人(新潮文庫)  カミュ

「太陽が眩しかったから」と殺人の動機を語る主人公に憧れたのは高校生の頃。夏休みに「異邦人」->「人間失格」->「こころ」->「合言葉はオヨヨ」というローテションを何回も繰り返した記憶がある。「合言葉はオヨヨ」は残念ながら絶版。

マルテの手記(新潮文庫) リルケ

「マルテの手記」は大山定一訳で読めと何かの本にあり、新潮文庫版で読んだ。主人公はパリで、ストーリーらしいストーリーがない。岩波文庫版(望月市惠訳)でも読んでみたが原書を読んでいないので違いがよく分からなかった。

悪霊(新潮文庫) ドストエフスキー

高校生のとき、ドストエフスキーの作品で最初に読んだのが「悪霊」。作品の冒頭、ステパン氏の話がだらだら続いて面白くないなあと我慢して読んだらだんだん面白くなった。連合赤軍や内ゲバ殺人がまだ新しい記憶だったので、同志殺人とはどんなものかと思い「悪霊」を最初に読んだような記憶がある。

 白鯨(岩波文庫) ハーマン・メルヴィル

エイハブ船長と白い鯨の戦い。鯨や捕鯨についてのペダンティックな記述には閉口した。鯨が激減したのは、アメリカの捕鯨船団が世界中で活躍?したせいではないかと思わせるような小説。鯨は脂だけ抽出して、肉は食べずに廃棄していたのには驚いた。

 闇の奥 (岩波文庫) コンラッド

映画「地獄の黙示録」の原作。映画ではベトナム戦争中のベトナムが舞台となっているが、「闇の奥」ではアフリカの川を遡上する。小説は映画ほど狂気じみておらず、心の闇の深さを感じる。「地獄の黙示録」はベトナム戦争の闇の深さか。

ブリキの太鼓(集英社文庫) ギュンター・グラス

主人公のオスカルは3歳の時階段から転落して成長が止まる。狂人の語りという体裁の小説なので、スローターハウス5同様妄想なのか回想なのか判然としない奇妙な物語。翻訳は池内紀さん。

高い城の男 (ハヤカワ文庫SF) フィリップ・K・ディック

もし日独が第二次世界大戦でアメリカに勝ったとしたらという歴史改変SF。易経の話が頻繁にでてきて、作中には連合国が勝った歴史改変小説(実際の歴史)の話もからまる複雑な構成。昔ディックの小説をよく読んだけどこの小説だけ異質な感じがした。

スローターハウス5 (ハヤカワ文庫SF) カート・ヴォネガット・ジュニア

時間を自由に行き来する主人公の物語。時間旅行は妄想なのか回想なのか。「人生のすべてを知りたければカラマーゾフの兄弟を読むといい、そこにすべてが書いてある。でもそれだけじゃ足りないんだ」。