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「素敵なダイナマイトスキャンダル」 末井昭


本書は母親のダイナマイト心中から始まり、工員、キャバレー看板書き、イラストレーターを経て編集者となった著者の自伝的なエッセイ集。本書は1982年に北宋社から刊行後、角川文庫とちくま文庫で復刊された。今回が3度目の復刊となる。最後のあとがきによるといずれの本も再版されなかったという。一度も再版されなかった本が4度出版されるというのは珍しい。本書では初刊や文庫版のあとがきや解説もふくまれている。ジュンク堂のエッセイの棚で末井さんの本を探しても見つからず、ウロウロしていたらサブカルチャーやタレント本がある棚で発見。「素敵なダイナマイトスキャンダル」は最後の一冊を購入した。

森山大道さんの「写真から/写真へ」のエントリーでも書いたが、”末井昭”という名前を知ったのは雑誌「写真時代」から。それ以前に末井さんが編集した雑誌は全く知らなかった。本書で取り上げている「NEW self」や「ウィークエンドスーパー」は管理人の記憶にない雑誌だった。これらの雑誌の執筆者をみると田中小実昌、嵐山光三郎、赤瀬川原平、秋山祐徳太子、南伸坊、荒木経惟等々のツワモノ揃い。本書が書かれた時、「NEW self」は古本屋で一冊3万円、「ウィークエンドスーパー」は一冊2万5千円で売られていたという。どんな雑誌だったか見てみたいがちょっと古本では買えない。

雑誌「写真時代」は創刊号が完売で、25万部まで部数を伸ばしたそうだ。昭和63年2月発禁になり廃刊。末井さんは、写真雑誌やカメラ雑誌を見ていてなぜ面白くないのかをチェックして、写真ということで考えた面白い部分は全部捨てられているのに気づいた。そのため、その捨てられているものを拾い集めて「写真時代」を作ることにした。

アラーキー&末井コンビの「写真時代」は凄かった。アラーキーもこの頃が一番エネルギッシュだったような気がする。アラーキーは「芸術、芸術、はい、それ取って」と言って、で女の子をどんどん脱がせていった。最初、裸はイヤだと言っていた女の子も不思議と裸になってしまうのだった。その後、アラーキーに自分の裸を撮って欲しいという女の子が増えていったそうだ。末井さんによるとアラーキーの写真はエロ本に向かないということだ。エロ本というものは、女に対する男の一方的な幻想で成り立つもので、アラーキーは穴ぼこを見ても風景としか見ず、写真を撮ることが愛であってセックスなのである。

荒木さんはよく、写真家は自分のイメージなんかで写真を撮ってはいけない、と言う。現実、現物をよく見れば、自分のイメージなんかふっ飛んでしまうのである。荒木さんの自己宣伝は、その現実、現物とのかかわり方であって、そのことはすなわち荒木さんの生き方なのである。
荒木さんと八代亜紀、荒木さんと天皇、荒木さんと編集者、荒木さんとレナちゃん、荒木さんと篠山紀信、荒木さんと少女たち、荒木さんと陽子さん・・・・そのかかわり方の証明を、僕らは写真と文章で見ることになるのだ。だから、荒木さんの写真は、一点の作品としてではなく、かかわり方のプロセスが全面展開されることになる。