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「自殺」 末井昭


「自殺」は「素敵なダイナマイトスキャンダル」と一緒に購入した。ぺらぺらながめて「素敵なダイナマイトスキャンダル」のほうを先に読みはじめた。「自殺」はちょっと重い感じがした後から読むことにした。「自殺」は「朝日出版社第二編集部ブログ」に連載された文章をまとめたもの。本書は自殺未遂したひとや自殺防止に関わる人びとのインタビューと著者の半生に関するエッセイが半々という内容。著者は一度も自殺しようと思ったことがないが、母親がダイナマイト心中をしたり、借金地獄になったり、不倫相手が自殺未遂したりと自殺の入口のようなところに何度かいたことがあった。そのときのことを書けば「こんな奴でも生きていられるんだ」と笑ってもらえるかもしれず、笑うということは自殺スパイラルから抜け出すことにもつながるのではないかと著者は考えた。

本書には「素敵なダイナマイトスキャンダル」で書かれていなかった「写真時代」廃刊後の著者の私生活のことが書かれている。著者は妻がいながら複数の女性と付き合っており、その一人が「素敵なダイナマイトスキャンダル」では謎の電話相手だった。その相手(本書ではFさんとなっている)との関係は”阿修羅のごとく”で、著者はよく編集の仕事ができたと思う。現在の著者の妻美子ちゃんと暮らすために、前妻と別れる場面もまさに修羅場という感じで凄い。

著者はオカルト雑誌「MABO」を廃刊した頃、金の先物取引に手を出し1987年10月19日のブラックマンデーで大損する。普通ならここで先物取引をやめるのを、別の北海道小豆や米国産大豆の先物に手を出して失敗する。この後から著者はギャンブルばかりやり始める。パチンコ屋に毎日通い、それがきっかけで「パチンコ必勝ガイド」を創刊する。バブル末期の頃、著者は不動産を購入し3億円近い借金をすることになる。その後10年の間で購入したマンションを売却してしまう。それでも債務が残っており、著者は8500万円分の借金を300万円で何とか帳消した。現在、著者は4500万円ほどの借金を月5万円で返済しているそうだ。

著者はイエスの方舟の責任者、千石剛賢さんをインタビューした本を読んだのがきっかけで聖書に惹かれるようになった。どうしても千石さんに会いたくて、「MABO」の取材ということでインタビューしにいく。その後、イエスの方舟の集会に参加するようになる。著者が聖書に惹かれているというのはちょっと意外な気がした。千石さん以外にも印象に残る人びとが取り上げられている。「AV女優」著者の永沢光雄さん、「東大中退パチプロ」の田山幸憲さんなど。二人ともガンですでに亡くなられている。永沢さんは「窓を開けた時にふっと入り込んできた小さな風に気持ちよさを感じられることができれば」命があることを喜べるのではないかと書いている。

自殺する人は真面目で優しい人です。真面目だから考え込んでしまって、深い悩みにはまり込んでしまうのです。感性が鋭くて、それゆえ生きづらい人です。生きづらいから世の中から身を引くという謙虚な人です。そういう人が少なくなっていくと、厚かましい人ばかりが残ってしまいます。
厚かましいというのは僕自身のことでもあり、感性が鈍くて図々しいから僕はこれまで生きられたのではないかと思っていて、自殺する人に対してコンプレックスを持っているような気がします。
本当は、生きづらさを感じている人こそ、社会にとって必要な人です。そういう人たちが感じている生きづらさの要因が少しずつ取り除かれていけば、社会は良くなります。取り除かれないにしても、生きづらさを感じている人同士が、その悩みを共有するだけでも生きていく力が得られます。だから、生きづらさを感じている人こそ死なないで欲しいのです。