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「大東京ぐるぐる自転車」 伊藤礼


芥川喜好さんの新聞コラム「時の余白に」を読んでいたら、本書が紹介されており、面白そうだったので購入。68歳で自転車を乗り始めて、7台の自転車を所有し、走行距離が約4万キロ。おまけに著者はペースメーカーを胸に埋め込んでいる。

ペースメーカーを埋め込むに至った日の出来事がすごい。著者は病院でホルター心電計を装着してもらった帰り、自転車に乗り始めたとき不整脈が起こった。渋谷から大森に向かう途中の宮下公園で、腕時計で計ったところ心臓が6秒止まったあと鼓動した。宮下公園で何度か気を失った。その後、どのように家へ帰ったかは気になるが、本書には書かれていない。翌日、病院へ行ってホルター心電計を解析したところ心臓が一番長く止まっていた時間が9.6秒だった。病院の医師は「9.6秒というのは、外来患者のホルターの最長記録です」と親指を立てて言われたそうだ。宮下公園で気を失った日から4日後、無事左の胸にペースメーカーを埋め込んだもらった。

列車のなかで本書を読んでいて、大笑いしそうになり我慢するのが大変だった。本書が面白かったので、同じ著者の別の本を購入した。アマゾンで調べると著者の著作の半分くらいが絶版状態だった。何とも残念なことだ。

自転車に乗るようになってから十年経った。<中略>では、何故そういうことになったのか。それは自転車というものがなかなか便利なものと分かったからである。それが分かるまで、わたくしも愚かにも、電車や自動車というような乗り物によって生活を重ねてきたのであった。しかし、古希も近くなって、遅ればせであったが、自転車というものの秘める力に気づいたのである。電車とか自動車とか飛行機は華々しく自己の存在を主張している。現代生活を送るには欠かせない存在だという顔をしている。だが、必ずしもそうではなかったのである。本当に頼るべき移動手段は自転車であったのだ。