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「ヒマ道楽」 坪内稔典


著者によると「ヒマ道楽とはヒマ(暇)を徹底して楽しむことだ。ヒマとカタカナで書いているのは、この言葉に肯定的、積極的な意味をもたせたいから」だそうだ。本書は「モーロクのすすめ」の続編にあたる。一編は2ページ程度の短くて平易な文章なのですらすら読める。平易な文章といっても内容が軽いということではない。

「モーロク」とか「ヒマ」という言葉を使うのは普通抵抗があるもので、40~50歳代のサラリーマンが「ヒマ」とか言うと白い目で見られそうだが。日本人は何かと「忙しい、忙しい」と言っていないと落ち着かない。本書には著者が定年退職後に「ヒマ道楽」を満喫している様子が随所に書かれており、羨望をもって読むひとも多いと思う。といっても「ヒマ道楽」ばかりではなく、漱石、正岡子規や柿等々の話もありとても面白い本になっている。

家族といるときを例にしたが、学生といっしょのときや俳句仲間と吟行しているときにも孤独癖が出る。ともかく、ふっと独りになりたくなる。いつもみんなといっしょ、という状態は耐え難い。
独りになったとき、しばらくしてすっと元のみんなの中へ戻れるとよいが、ときどき、うまく戻れないことがある。独りの気分を引きずってしまうのだ。そういうとき、ねんてんさん、ねんてんさん、何か気にさわりましたか、と心配される。ときには、体調が悪いのですか、と言われる。うまく説明できないので、この人は気難しいと思われがちだ。自分としては、みんなの中へ入りたいのだが、どうしてもうまくゆかない。
やっかいだなあ、と思う。なさけないなあ、とも思う。でも、自分でも扱いかねているこの孤独癖は、私のエネルギー源になっている感じがしないでもない。これがなくなると、私は張りを欠くだろう。弾力も欠くだろう。とても平板な老人になってしまう気がするのだ。