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「ウェブに夢見るバカ」 ニコラス・G・カー


The Independentにfacebookが開発中のAIロボットどうしが独自言語を使い会話を始めたため、ロボットをシャットダウンしたという記事がでていた。facebookがどのようなロボットを開発していたのかわからないが、来るとこまできたかという感じがした。本書でもfacebookやGoogleなどのIT企業が開発しているAIというかアルゴリズムについて取り上げている。GoogleのAI囲碁ソフトはプロ棋士にも勝てるほどになっている。優秀な人材と豊富な資金で開発を続けるGoogleはどこを目指しているのか。

本書の原題は”Utopia is creepy”。なぜ邦題が「ウェブに夢見るバカ」になったのかわからない。本書は、著者のブログ”ROUGH TYPE”からの記事と他のメディアに発表した記事からなる。どの記事もインターネットやAI、ロボット等の技術と人間との関係についての考察である。インターネットが「素晴らしい新世界」をもたらすとは限らないことは薄々感じても、表だって批評するひとは少ないと思う。スマホを見ながら歩くのは世界共通のようで、人間が本来持っている空間認識力や外来刺激に対する反応がスマホ歩きで衰えるという実験結果があるそうだ。

著者によるfacebookやGoogleのCEOにたいする批判は辛辣だ。シリコンバレーのIT企業は、いくら「素晴らしい新世界」的美辞麗句を並べても自社の利益追求しか頭にない。昨年のアメリカ大統領選挙で、トランプ候補(当時)がtwitterで過激な書き込みを繰り返し、以前なら大統領候補を断念しなければならないような失態にも関わらずかえって支持者を増やしていった。選挙におけるインターネットの影響が新しい局面に来ていると著者は述べている。

フェイスブックに行くと、同社のニュースフィードのアルゴリズムによって選ばれた滝のようなメッセージを目にすることになり、それに対する反応の方法も用意されている。いいね!ボタンを押すこともできるし、そのメッセージを友達とシェアすることもできれば、短いコメントを付けることもできる。ツイッターのメッセージについても、リプライやリツイート、ハートマークのボタンが与えられており、思いはごく限られた文字数で表さなければならない。グーグルニュースの見出しは、最新の記事を読むように強調され、ほかのプラットフォームでシェアできるようにさまざまなボタンが並んでいる。どのソーシャルネットワークも、わたしたちが何を見るか、どう反応するかの両面で、このような制約を課している。その制限は公共の利益とはほぼ関係がない。ネットワークを運営する企業の商業的利益とプログラミングの限界を反映しているだけだ。
ソーシャルメディアの型にはまった性質は、対人コミュニケーションを簡素化し、迅速化しているから、友人間での気軽なやり取りには適している。インスタグラムにアップされた自撮りの写真を評価するのに、ハートマークをクリックするのは最適な方法だろう。だがそれが政治の話となれば、その制約は致命的になる。政治議論がテンプレートやルーティンから何かを得ることはめったにない。それが最も有意義になるのは、綿密な論理、細部へ気配り、細やかで終わりのない批判的思考を伴うときだ。しかし、ソーシャルメディアはそうしたものを促すより妨げる傾向にある。
今後一年にわたって、大統領選は投票日に向けものすごい速さで進んでいく。わたしたちは誰もが-有権者も、マスメディアも、候補者も-ソーシャルメディアの時代に国政選挙がどのようなに展開するかを学ぶことになる。新しい門番に守れた門がかつてなく狭いことを発見することになるかもしれない。

アメリカ大統領選挙はトランプ候補が勝利した。彼は大統領となったいまもtwitterで過激な発言を繰り返している。