KAZUHIKO KIKUCHI BLOG

「自由への大いなる歩み」 M・L・キング


本書は初版が1959年で、管理人が読んだのは今年アンコール復刊したもの。今年キング牧師暗殺から50年を迎えたので復刊したと思われる。版が昔のままなので文字が小さく、最近の新書になれていると老眼気味の管理人には読むのが辛い。昔は小さい文字でも平気で読んでいたけどそのため目が悪くなったような気がする。

本書は1955年12月5日にアラバマ州モントゴメリー市(本書ではMontgomeryをモントゴメリーとよんでいる)で起こった黒人によるバスボイコット運動の記録である。1955年12月1日バスに乗ったひとりの黒人女性が白人に座席を譲らなかったため逮捕されたことが発端になった。当時バス内の人種的隔離は、前方四列は白人専用席で後方四列が黒人用になっていた。もし白人専用席が満席で白人が乗ってきた場合、黒人が席を譲らなければならなかった。黒人がバスに乗るとき前方で料金を支払い一旦バスを降りて後方のドアから乗らなければならなかった。黒人が料金を支払いバスを降りて後方へ向かっている最中にバスが発車してしまうことがたびたびあった。バスの運転手は全て白人だった。1955年12月5日黒人によるバスボイコットが始まり、キング牧師たちは約1年後最高裁判所からバスの人種的隔離を規定しているアラバマ州及びモントゴメリー市の法律は違憲であるという判決を勝ち取る。

バスボイコット闘争中、キング牧師は様々な嫌がらせや強拍を受け、爆弾を投げ込まれる。それに対してキング牧師はキリスト教とガンジーから学んだ非暴力な抵抗運動を貫いた。本書のドキュメンタリーの部分はとても面白くひきこまれた。若い頃の大江健三郎さんのルポルタージュを思い出した。ところが『ぼくたちはここからどこへ進むのだろうか?』になると読むスピードがガクンと落ちてしまった。訳者あとがきにもあるが、アガベ(愛)を地上に実現する手段としての非暴力抵抗運動の哲学が観念的過ぎてよく分からなかった。

『非暴力への遍歴』の章では、「戦争は決して積極的もしくは絶対的な善ではありえないが、悪の力が拡大し成長することを阻止するという意味では消極的な善として役立つことはできるだろうと感じた。戦争はおそるべきものではあるが、全体主義的体制-ナチ的ファシスト的体制や共産主義的体制-に屈服するよりはましかもしれぬ」とキング牧師は述べている。しかしながら戦争の容認は、非暴力の抵抗思想と矛盾するのではないだろうか。それでもキング牧師は公民権運動のリーダーとして運動を推し進めていけたのは、その考えに多くの人々が共鳴したからだろう。