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「ただの文士」 堀田百合子


本書は、娘さんによる父堀田善衛の追想記。管理人は堀田善衛さんのよい読者とは言えず、小説は「時間」だけ読んだことがある。あとは岩波新書の「インドで考えたこと」「スペイン断章」、文庫で「方丈記私記」「定家明月記私抄」「定家明月記私抄・続編」「上海にて」「ゴヤ1~4」を読んだ。今の日本で文士と言える人はあまりいないと思う。と言うか「文士」という言葉を耳にすることが殆どない。

1950~60年代の回想では、埴谷雄高家での「ダンスパーティー」と米軍の脱走兵をかくまうところが面白かった。大学受験が近いのに、脱走兵がいる自宅でよく勉強ができたなと管理人は思った。自分なら多分無理だと思う。やはり文士の娘さんは肝が据っていると感心した。

管理人にとって「文士堀田善衛」と言えばスペインというイメージが強い。本書によるとスペイン国内を何回か引っ越して、最後はバルセロナに落ちついた。そのバルセロナもオリンピックが近づくに連れて、街の様子が変わってしまう。そのため堀田善衛夫妻は日本へ帰国することになった。「定家明月記私抄」をバルセロナで執筆したというのも驚きだった。

本書のあとがきには「楽屋裏のそのまた裏は、書かないことにいたしました」とあるようにスキャンダラスな事がかかれていない。本書を読み終わって、思わず「ミシェル城館の人」を購入してしまった。