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「美は乱調にあり」 瀬戸内寂聴


瀬戸内寂聴さんの小説を初めて読んだ。岩波現代文庫版には副題として「伊藤野枝と大杉栄」とあるが、本書で大杉栄が登場するのは終わりのほうになってからなので、「階調は偽りなり」を含めてひとつの作品としているのだろう。本書は所謂「日蔭茶屋事件」で終わっている。まえがきによると大杉栄と伊藤野枝が殺されるところまで書く予定が甘粕大尉の本性がつかめず16年後に「階調は偽りなり」が完成する結果になった。

本書は伊藤野枝の恋愛を中心に描いている。なぜ無政府主義や社会主義が暗黒時代となったのかの背景が描かれていないし、社会運動関係の記述も少ない。辻潤と伊藤野枝の関係は、今なら高校教師が元教え子と同棲して学校を辞めるという「恋愛騒動」だし、「日蔭茶屋事件」の原因となった大杉栄と3人の女性との四角関係は格好のゴシップネタ。平塚明子と奥村博史との関係も「若いツバメ」との色恋沙汰。実名でてくる人物が管理人のイメージとは随分違っていた。

「階調は偽りなり」を読まないと16年の空白の理由が分からないけれども、甘粕大尉の本性が「伊藤野枝と大杉栄」を執筆するのにそれほど重要だったのか管理人にはわからない。管理人は伝記小説や歴史小説が苦手だ。でも続きを読むしかしようがない。